”新入社員が「自律自転」し、「マネジメント」できるようになる”というゴールを掲げる、住友商事様での新入社員研修「SCOLA 守破離eader塾」。
①本から、②講演者から、③参加者同士から学ぶ(協働学習)という3つの軸で、実務に役立つスキルを短期間で学ぶことができるプログラムです。新入社員がこの研修を通じて自分自身で考え、自律的に行動し、一人前の社会人として、2年目のスタートラインに立つための飛躍の場と位置付け企画されました。同社ではこの学びを実現するためにチームタクトを活用し、自律的な学びと習慣化を促進しました。
本プログラムの最後には、部門幹部が全員集まる役員へのアイディアプレゼンテーションの場を用意。
担当取締役からは「実際の役員会で議論できるレベルの内容だった」という評価を受け、新規事業アイデアや現場の課題解決案の中には、実際の案件として検討が進んでいるものもあるとのこと。
このような成果を出すまでに、どのようなプロセスで研修を実施したのか伺いました。
概要
- 社員の「自律自転」を促す新たな新入社員研修「SCOLA ~守破離eader塾~」を実施
- 本から学ぶ、人から学ぶ、相互に学ぶ、の3つのプログラムをベースに実務に役立つスキルを自律的に短期間で学ぶ
- 各プログラムの研修支援プラットフォームとしてteamTaktを活用
- 指導社員の負荷軽減/実際の役員会で議論可能な水準のアウトプット/コロナ禍でのリモートワーク対応下のセルフマネジメント力の向上 等の効果を実感
- 「SCOLA ~守破離eader塾~」で学んだことを習慣化し、自律自転する組織を目指す
住友商事株式会社(以下住友商事)のメディア・デジタル事業部門および生活・不動産事業部門の両事業部門で2019年11月から2020年2月までの約4ヶ月間に渡って実施された新入社員研修でteamTaktを活用いただきました。前年度までとは内容を大きく変更した、社員の「自律自転」を促す研修「SCOLA~守破離eader塾~」を担当されたメディア・デジタル業務部兼生活・不動産業務部人事・総務チームサブリーダーの中野有さん、主任の上野祥吾さん、三牧健太郎さんと、研修に伴走された株式会社中尾マネジメント研究所(以下中尾マネジメント研究所)の中尾さんにお話を伺いました。
社員の「自律自転」を促す新たな新入社員研修
―「SCOLA~守破離eader塾~」はどんな研修だったのでしょうか。
(上野)「SCOLA~守破離eader塾~」の対象は、両部門に配属された入社1年目の新入社員です。入社時研修を終え、配属先が決定し、各部にてOJTを通じて見様見真似で実務を身につける、そんなさなかにいる彼らがこの研修を通じて自分自身で考え、自律的に行動し、一人前の社会人として、2年目のスタートラインに立つための飛躍の場と位置付け企画しま
した。
(中野)新入社員研修によくある、基本動作や仕事の進め方だけではなく、その先に繋がるものにまでリーチさせたいと考えていました。そこで、守破離の「離」に、自分をリードする、組織をリードするという言葉を併せた「守破離eader塾」という名称が生まれました。
―具体的な研修内容について教えてください。
(中尾)「SCOLA~守破離eader塾~」のゴールは、「自律自転」して「マネジメント」できるようになること、つまり、自分で考え、動き、望ましい状態を何とか実現するスキルを身につけることです。
【①人から学ぶ、②本から学ぶ、③相互に学ぶ】を1セットとした1ヶ月のプログラムを、4回(4ヶ月間)実施しました。経営者など「人」から学ぶ勉強会や、「本」からの学びをディスカッションするアクティブブックダイアログから得たものを日々の業務で実践し、週次のグループコーチングの場でそれを「相互に」振り返り、最後は役員陣へのアイデアのプレゼンテーションで締めくくるという内容です。
実務に役立つスキルを自律的に短期間で学ぶ
―前年度までの研修とは内容を大きく変え、このような新しい形で実施されたそうですが、どういった背景があったのでしょうか。
(上野)これまで実施していた新入社員研修は、現場経験・業界調査・アイデア創出の3つのテーマから1つを選び、半年間ほどかけて考察し、提案・提言をプレゼンテーション資料にまとめ、最終的に部門幹部の前で発表、順位付けするという内容でした。
しかし、基礎となるスキルが足りないままにアイデアを創出する、いわば一段飛ばした研修になっていたという課題がありました。そのため指導する先輩社員の時間的な負荷も大きくなっていました。
基礎固めの部分をしっかりサポートすること、新入社員の人数が40名程度に増えたこともあり、グループで実施することを検討する必要があると感じていました。そこで、仕事を進めるための型を短期間で学べる研修を新たに企画しました。
(中野)また、人事としてこれまできちんと作り込んだ研修を実施していたことで、新入社員が教えられることに慣れてしまっていたのではないかという課題感もありました。でも、実際の会社生活ではそれでは困ります。「自律自転」というコンセプトの背景には、もっと自律的に、自分でリソースを探していくマインドを持ってほしい、仲間同士で悩みを共有しながら助け合うようになってほしいという思いがあります。
研修内の各プログラムにおいて、チームタクトが参加者のプラットフォームに
―「SCOLA~守破離eader塾~」で展開されたプログラム全体を通して、チームタクトを活用いただいたのですね。
<①「人から学ぶ」プログラム概要>
「人から学ぶ」のプログラムでは、経営者であるゲストによる20分ほどの講演後、参加同士で対話を実施しました。その時間を有意義なものとするために、参加者はまず事前課題としてチームタクト上に「もし自分がこの経営者だったらどのような戦略を立てるか」、「この人から何を得たいか」、「質問したいこと」などを記入します。次に、講演や対話からの学びを踏まえ、「明日からやると決めたこと」を書き込みます。
チームタクトに記載した内容は参加者が相互に閲覧することができるため、「明日からこれをやります」と宣言することで実行につなげることができます。
(三牧)「人から学ぶ」プログラムでは、いい習慣を持っている方にたくさん会ってもらったので、TTPS(徹底的にパクって進化させる)して、自分の習慣にしてほしいと思います。
<②「本から学ぶ」プログラム概要>
「本から学ぶ」プログラムでは毎月2冊の課題図書を読み、「明日から実践すること」を決めてチームタクトに書き込みます。もともとあまり本を読む習慣のない参加者も、自分がその本から何を学び、どんな行動に変えていくのかを考える習慣をつけることを促すことができます。他の参加者がどんなことを考え、行動しようとしているかを閲覧することも可能です。
(中野)これまでと異なる研修を実施しようと検討を進めていた中で、本を読む習慣がない新入社員が多いという話が出てきました。本から学ぶきっかけ、読書を習慣化するきっかけを作りたいという意図でこのプログラムを実施しました。
<③「相互に学ぶ」プログラム概要>
「相互に学ぶ」プログラムは、週に一度、グループのメンバーとファシリテーターで振り返りを行う「グループコーチング」という形で実施しました。チームタクト上の「G-POPフォーマット」という中尾マネジメント研究所オリジナルのシートに、「Goal、その週の計画(Pre)、実際にやったこと(On)、振り返り(Post)、来週の計画」を記載します(それぞれの頭文字を取ってG-POP)。常にゴールを意識しつつ、事前準備に時間をかけ、実行し、振り返り、そこから学ぶサイクルを回し、その習慣化を助ける仕掛けです。
(三牧)チームタクト上で相互に閲覧、コメントすることができるため、他の参加者から学び、刺激を与え合う様子も見られました。
(中野)参加者に聞いてみると、「グループコーチングがあるからこういうことを相談してみよう」と業務上の困りごとを仕事の合間にシートに書き込んだり、「アドバイスをもらったから今週はこれを意識しよう」などと仕事とリンクさせて取り組むことができていたようで、非常に貴重な時間だったようです。
基礎を固め、その先へつながる新入社員研修
―このような形で新たな研修を実施してみて、いかがでしたか。
(上野)有識者の講演、本を読む、参加者同士のディスカッションなどによって、基礎固めの面で一定の達成度があったと感じます。新入社員の指導を担当する社員も、その点で良い印象を持ってくれたようです。指導社員の負担もかなり減らすことができました。
(中野)計画を立て、実行し、振り返るサイクルを回すことを研修でしつこく行ってきたので、コロナ禍で突然テレワークになった時に、基本動作としてそれができるようになっていたことは大きいと思います。自分でタスクを棚卸して進捗管理したり、セルフコーチングできている参加者がいたのはこの研修の効果だと感じます。
従来、新入社員には在宅勤務を認めていなかったので、この研修の参加者は2年目になり初めて在宅勤務を経験しました。まだ仕事力の貯金がない中で自宅で仕事を進めなければいけないという状況で、この研修での学びが役に立ったと言う人もいました。
―前年度までと比較してどんな違いがありましたか。
(中野)例年は、最終プレゼンテーションに向け各新入社員が所属する本部の威信をかけた戦いという色合いも出てきたりして、新入社員のやりたいことが実現できないこともありました。もちろんそれはそれで会社員として学ぶべきことではあるのですが。
今回の研修では中尾さんをはじめ、ご指導いただいた皆さんに新入社員自身の想いを引き出して頂いたことや、チームでお互いの理解を深めながら進めて行くことができたことで、例年と比較して新入社員らしいカラーが出ていたと感じます。部門幹部が全員集まり本番の役員会さながら実施した最終プレゼンテーションでは、担当取締役から実際の役員会で議論できるレベルの内容だったという評価を受けました。結果、新規事業アイデアや現場の課題解決案の中には、実際の案件として検討が進んでいるものもあります。
また、本部をまたぐチーム構成としたため、所属を超えた参加者の相互理解が進み、今もその関係性は続いています。例年の新入社員研修では参加者はかなり孤独だったと思うのですが、今回の研修では孤独感がありませんでした。「自分たちで創る研修」という雰囲気が作れたと思います。
―研修のためのプレゼンテーションではなく、実際の事業や参加者のその後につながっていくものになったのですね。「SCOLA~守破離eader塾~」に対する参加者の反応はどうだったのでしょうか。
(中野)最初は様子見という感じでした。「次の課題を前もって教えてほしい」「これからどういうタスクが出てくるのか全体像を教えてほしい」と言う参加者もいましたが、頑なに教えませんでした。教えてもらえないとわかった瞬間から、次から次へと来るものに応え、その意図を自分なりに読み解いていくようになりました。自分で考えてなんとかしないと先には進まないとわかったのだと思います。
(上野)「正解を教えて」というタイプの人もいましたし、メンバーによってはかなり意識に差があると感じました。その中で最初は心配だった参加者も、チームタクトやグループコーチングを通じて他の参加者の取り組み状況を見ながら、軌道修正していくのが見られました。
(三牧)チームタクトによってそういった参加者の変化がリアルタイムでわかることに加え、ログイン回数や誰が誰のシートを見ているか、積極的に参加しているか、ということも目に見えてわかりました。研修参加者の様子を日々データで確認できるので、プロジェクトチーム内でもそれまでは印象や感覚でしか捉えられなかった新入社員に対する理解、議論が深まったと感じます。
また、参加者の記入したシートには全て目を通し、コメント、いいねをすることで、新入社員とのミーティングに参加できないときでも彼らの取り組み状況に目を配るよう心掛けていました。これによって新入社員たちも「ちゃんと見られている」という緊張感を感じていたと思います。普段研修に顔を出さない部門幹部や現場の上司にチームタクトを通じて目を通してもらえたこともよかったです。
参加者同士の共創・自律自転を促すチームタクト
―チームタクトについてはどう振り返っていますか。
(三牧)まずは新入社員でも直感的に使えるユーザビリティがよかったと思います。細かい説明をしなくてもすぐに使い始めることができました。
(上野)参加者にとって、チームタクトが「何ヶ月前はこういうことに悩んでいた」と振り返ることができる成長の記録になりました。立ち返る場所として、研修が終わった今でもチームタクトを見たいという参加者もいます。
周りの人の様子を見ることもでき、良いところは参考にして取り入れられる点もよかったようです。
(中野)参加者全員が研修の過程全てを同じプラットフォームで共有できることで、例年の研修では完成品としてのアウトプットしか表に出てきませんでしたが、そこに至る紆余曲折、個々人の想い、考え方のクセ等まで知ることができました。
―今回は複数のプログラムから成る研修全体を通してチームタクトを活用いただきましたが、その点はいかがでしたか。
(中野)研修全体としては、講演などのイベントも重要ですが、そうでない時の過ごし方が大事だと考えています。
チームタクト上には、講演や読書会の前にそこから何を学ぶかを意識する仕掛けがあり、毎週のグループコーチングに向けて一週間をどう過ごすかを意識する仕掛けがあり、それが蓄積されていきます。イベントが点としてあるのではなく、線や面になって繋がっていくイメージです。会社生活、私生活の全てを研修化し、考えながら過ごすことを習慣化できるツールだったのではないかと思います。
(三牧)チームタクトが私たち自身の振り返りにも役立ったと感じています。研修では最終的なアウトプットがプレゼンテーションやグループワークなので、通常はそこまでの過程で参加者が講師の話をどう感じたか、それを受けてどう変わったのかなどをつぶさに把握することはできません。それは人事にとってはリスクとも言えます。それに対し、チームタクトをプログラム全体のプラットフォームとして活用したことで、講師や書籍からのインプットがどうだったかがリアルタイムにわかりました。それにより、人事部としても試して結果がわかるサイクルを回すことができました。
新入社員研修で学んだこと習慣化し、自律自転する組織を目指す
―「SCOLA~守破離eader塾~」に参加された方々に、今後どう成長していってほしいとお考えですか。
(三牧)この研修は、習慣化が1つのキーワードでした。実際にプログラムを通して習慣的に学ぶことが必要だということを感じ取った参加者もいたのですが、1つでもいいので得たものを習慣化してくれたらと思っています。
(中野)「SCOLA~守破離eader塾~」に私たちが込めた思いとして、仲間同士で悩みを共有し助け合いながら、自分で考え自ら動いてほしいというものがありました。実際に研修を通してお互いの強みを知るなど、参加者同士の関係性は深まりました。研修が終了した今でも、自分たちでグループコーチングを続けているメンバーもいるようです。一週間をどう過ごすか、次の一週間に何を意識し行動するか、振り返りながら進めているようです。その関係性を今後の会社生活でも活かしてほしいと考えています。
関連|中尾マネジメント研究所ウェブサイトに掲載された「SCOLA~守破離eader塾~」に関する記事