<お話を伺った方>
日本たばこ産業株式会社 営業企画部 営業戦略チーム 課長代理 白濱諒さん
同 主任 稲垣諭さん
同 主任 明歩谷紗希さん
(以下、敬称略)
2022年に組織体制が変更になり、「地域密着型総合営業」を重視するようになった日本たばこ産業株式会社。コロナ禍の影響や遠隔地活動に伴うコミュニケーション機会の減少、更なるPDCAサイクルスキルの向上、個々人がもっているスキルの共有を目指し、G-POP®グループリフレクション(以下、G-POP®ぐるり)(※1)を導入。チームタクトを活用して振り返りを行うことで、個々のセルフマネジメントスキルが向上するとともに、コミュニケーション機会が増え、ナレッジ共有が可能になりました。現在20支社、約300名が G-POP®ぐるりに参加しています。社内の導入拡大に務めた、同社営業企画部営業戦略チームの白濱諒さん、稲垣諭さん、明歩谷紗希さんに、チームタクトの活用方法やG-POP®ぐるり拡大方法について伺いました。
概要
<課題>
- 営業担当者は、本社施策などの日々の活動に追われており、個人の活動を振り返る習慣があるメンバーが少なかった。(活動における良かったことの再現性向上と、反省すべきことの再発防止策等の意識)
- 営業担当者同士のナレッジ共有やコミュニケーションがうまくできていなかった。
<活用成果>
- メンバー同士で進め方を参考にする、刺激を受けるなどコミュニケーションが活性化。
- 導入支社では、活動における計画と振り返りの習慣化が図れた結果、組織全体としての目標への意識醸成へとつながった。
- 「今が一番楽しい」「グループリフレクションで宣言したからには頑張る!」とポジティブな気持ちで業務を推進するメンバーも増加。
<チームタクト活用のポイント>
- 振り返りの型「G-POP®」を崩さずにグループリフレクションを効果的に継続できた。
- 参加者すべての活動がタテ(上司・部下間)とヨコ(同僚・他チーム間)で分かるようになり、データのやりとりや整理等管理を効率化。
ナレッジ共有、セルフマネジメント、コミュニケーション 現場の3つの課題
ーグループリフレクション導入の背景には、どのような課題がありましたか。
白濱:2022年に組織体制が変更になり、支社の方針・活動などは、該当支社へ権限委譲されました。組織再編の目的である「地域密着型総合営業」に取り組む上で、いくつかの課題がありました。
1つは、個人の活動について振り返ることの習慣化やその方法(型)について、良いものが無いかと探しておりました。もう1つは、JT社員は真面目なので、まっすぐ愚直に仕事に取り組んだ結果を感じる機会を提供する必要があると考えていました。
そこで、北海道・東北エリアの高橋地域長が中尾マネジメント研究所の中尾さんに相談し、同社の経営塾などで活用しているグループリフレクションを勧められました。その後、高橋さん自身が中尾塾に参加し、導入を決めたのです。
稲垣:コミュニケーション不足を解消したい考えもありました。体制が変わり各支店の担当エリアが広がったこと、コロナ禍によって出社が減っていたことや、遠隔地での活動などから、営業担当者が顔を合わせる機会が少なくなっていたのです。グループリフレクションによって毎週コミュニケーションを取る機会ができ、ほかのメンバーの動きが分かるようになると良いという期待もありました。
ーG-POP®ぐるり導入時に、苦労したことはありましたか?
白濱:最初に導入した山形支社は、16人3グループでスタートしました。ここでは、「まずはやってみよう」と比較的ポジティブに受け入れられ、スムーズに始められました。
その後導入した支社については、全員が前向きに取り組んでもらえたわけでなく、当初ネガティブな反応だったと支社長から聞きました。1週間に1時間グループリフレクションに時間を割くことに抵抗を感じる人が多かったようです。若手社員には、自分の成長のためになるとポジティブに受け入れられていました。
ーネガティブな人には、どのような働きかけを行いましたか?
白濱:対面で話して信頼関係を築くことが大事だと考えています。まずは、この施策の意図が伝わるように、顔を合わせてお伝えすることが大事だと思い、導入する全支社に赴きました。
私自身のグループリフレクション参加当初の体験から、最初は面倒だと思っていても、2~3カ月続ければ「グループリフレクションをやって良かった」と思ってもらえる自信があったのです。「やっていると意外と良いかもって思っていただけると思いますので、3カ月は騙されたと思ってやっていただけますか?」と言い続けました。
ただ、強制的に参加させることはせず、あくまでも希望した人に参加してもらうかたちにしています。
明歩谷:導入から1カ月間は、本社メンバーがファシリテーターを務めます。基本の型を覚えてもらうこと、指示や命令の場ではないことを体感してもらうことが大事だと考えていました。そのために、ときには対面で実施するなど、丁寧なコミュニケーションを取ることを大事にしています。
チームタクトを採用 他チームのシートも閲覧し、学び合いを促進
ー具体的にどのようにグループリフレクションを行っていますか?
白濱:週1回1時間程度、3~4人のグループで、G-POP®シートに沿って振り返りを行っています。
参加は希望者のみで、1グループだけ展開している支社もあれば、複数グループで行っている支社もあります。
ファシリテーターは、チームリーダーや支社の中核を担うメンバーが務めることもあれば、参加者全員が輪番制で務めることもあります。これも、各支社に任せています。
月1回本社メンバーが参加したときは、参加者だけでなく、ファシリテーターにも気づいたことをフィードバックしています。
ー当初はシートにPowerPointを使っていたとうかがいました。コードタクト社のチームタクトを採用した理由を教えてください
白濱:高橋地域長が中尾塾のグループリフレクションでチームタクトを使っており、振り返りの型を保つのと、メンバーからのコメントを一元管理できる点で良いのではないかと提案されました。一度本社メンバーで使ってみたところ、非常に使いやすかったため導入することにしました。
2023年2月以降にグループリフレクションを始めた支社は、最初からチームタクトとセットで使っています。導入が早かった山形支社や秋田支社は切り替えのタイミングで変えて、今はみんなチームタクトを使っています。
ーPowerPointからチームタクトにして良かった点があれば教えてください
白濱:ほかのメンバーのシートを見やすいことです。グループ内では必ずコメントし合うことにしていて、そうすると、自分の振り返り資料(PowerPoint)とコメント(Teams)で別々になっていたんです。チームタクトでは、シートに直接コメントできるのが良いと思います。
営業担当者は忙しいので、共有やコメントをしやすいことがコミュニケーションの活性化につながっています。自身へのコメントも確認しやすいことも、活用するために重要だと考えています。
稲垣:チームタクトだと管理者として全参加者のシートを確認でき、各支社の状況が手に取るようにわかります。人数が多くなり、データのやりとりや整理に手間がかかるようになっていたため、管理しやすくなりました。
また、G-POP®は型が大事です。チームタクトは、G-POP®に最適化されていて型を崩さずにできることも良いと感じています。
明歩谷:Teamsでグループリフレクション参加者のコミュニティーをつくり、良いシートをシェアしています。それを見て、それぞれのシートを書くときの参考にしてもらっています。
同じ部署でも、チームタクト導入以前は、ほかの人の仕事の進め方やタスク、スケジュールなどが把握しにくい状況だったと思います。振り返りを行うことで、その活動がなぜ上手くいったのかという気づきがあります。それを共有することで、良い方法を真似し合うことができます。さらに、メンバーからのコメントによって、再現性を高めることにもつながるのです。チームタクトを使うことで、よりナレッジを共有しやすくなりました。
白濱:また、チームタクトを使うと、個人のG-POP®の品質を「G-POP®レポート」というAI分析ツールで診断していただくことができますが、これにより、振り返りの質の向上にもつながると思います。
各支社長の判断で、20支社が導入 約300名が参加
ー現在20支社に導入しているとうかがっています。どのように各支社に拡大していますか?
白濱:2022年の山形支社導入後、北海道・東北エリアに口コミで広まりました。そして、G-POP®ぐるり導入支社の成果があがっていることから、さらに拡大していきたいと考え、支社長会議で取り組みを紹介しました。それを聞いて興味をもった支社長に、説明会に参加していただくよう声をかけたのです。
2023年8月に開催した説明会には、既に導入していた東北含め約30支社が集まりました。そして、新たに13支社が導入することになりました。
グループリフレクションを展開する上では支社長の意思を大切にしています。私たちが主導するのではなく、組織の長である支社長が導入を決め、積極的に組織のサイクルに導入することでリーダーシップを発揮し、メンバーをサポートすることで、より良い場になると考えているからです。導入するかどうかの決定を支社長にしていただくことを重要視しました。
現在、20支社約300名が参加しています。担当者も含めると約300名がグループリフレクションに関わっています。導入を検討している支社もあり、今後も増えそうです。
ー拡大にあたって懸念していたことはありましたか?
稲垣:本社メンバーがどの程度サポートするか、リソースは足りるかという心配はありました。リソースとの兼ね合いで、フォロー体制の手厚さを3段階で検討していましたが、導入するからには、良いものだと感じてもらうことが大切です。最初が肝心だと考え、一番丁寧にサポートする体制をとりました。導入時に各支社に行き、最初の1カ月間はファシリテーターを務める体制です。
ー支社でより効果的に活用するために、どのようなサポートをしていますか?
白濱: 13支社が新規導入する前の2023年10月にキックオフミーティングを行い、G-POP®ぐるりを考案した中尾さんとコードタクト社のサポート担当後藤さんから、それぞれグループリフレクションのやり方とチームタクトの使い方を説明していただきました。
また、2024年2月に開催したG-POP®セッションにも中尾さんと後藤さんに来ていただきました。導入支社から各2~4名、総勢50名が参加し、他支社の人とグループリフレクションを行ったり、中尾さんの講義を聞いたりしました。チームタクトを使ったワークショップも行い、悩んでいることやうまくいっていることをシェアしました。他者のシートを見ることで学び合いにつながり、気づきを得て支社に持ち帰ってもらうことができたと思います。
明歩谷:現在も、四半期・月に一度程度、本社メンバーが参加しています。参加者への気づきをフィードバックするほか、ファシリテーターにも気づいたことを伝えています。
ーチームタクトを提供しているコードタクト社からのサポートはいかがでしたか?
白濱:支社から、チームタクトのシステムや使いかたについて質問があったときに、直接対応していただけて助かっています。
導入時に、機能やシステム開発の背景などの説明をいただき、支社のメンバーも使い方のイメージは初めからできていたと思います。使い方は難しくないので複雑な質問はありませんが、細かい部分で問い合わせがあったときにご対応いただいています。
本社メンバーのリソースも余裕はないので、お任せできてありがたいです。
個々のスキルアップとナレッジ共有により、各種指標が向上
ーグループリフレクションを行っている支社は、どのような成果がありますか?
白濱: 最初に始めた山形は、全メンバーのPDCAのスキルが上がっていて、非常に高い達成率を果たしています。特に、年次の高い社員が前向きにG-POP®に取り組んでいることを聞いて、嬉しく感じています。PDCAスキルが上がるだけでなく「今が一番楽しい」という意見もあがっているのです。
ー指標が上がっている理由は、どのようなことが考えられますか?
白濱:まず、自分たちの行動をメンバーから称賛・共感されることで、心理的安全性が高まったことだと思います。同時に、ほかのメンバーの行動に刺激を受け、がんばろうと思うようになります。さらに、PDCAのサイクルがうまく回せるようになり、活動の成果が出ているのではないでしょうか。
メンバー同士で刺激を受ける、進め方を参考にするなど、チームタクトの使いやすさが学び合いにつながっているのだと思います。
稲垣:特に成果があがっている北海道・東北エリアは、早く始めたためG-POP®が染みついています。PDCAの質が上がっても、すぐに成果が出るわけではありません。改善のスピードはどんどん速まっているのではないかと思います。
北海道・東北エリアのメンバーからは、以下のような意見がありました。
「以前は個々の力が高くても共有する力が弱かった。グループリフレクションを使い、その課題感を克服できている」
「計画していたことが、できたのかできないのか、気づかずに終わっていた。目標を書いて毎週振り返ると、目標が気になるようになり、達成のために行動するようになった」
「振り返る習慣ができるだけでもやる価値がある」
「自分の仕事が何のために行っていることなのかが分かるようになる。周りが何をやっているかも分かるようになり、お互いの仕事に対する理解が生まれた」
安定して業績を上げ続けるために、組織のスキルも向上させる
ー今後の目標や、これから取り組みたいことがありましたら教えてください
白濱:更にPDCAスキルを上げたい支社が、G-POP®を使って向上すると良いと思っています。今後も強制はしませんが、私たちがサポートして導入につなげていきたいです。導入したいと考えている支社長に課題をヒアリングし、その課題を改善できるツールとしてアプローチしていきます。
稲垣:導入している支社の中でも、より多くのメンバーに波及させていきたいです。すでに参加者個人のPDCAスキルは上がっていますが、組織全体を向上させるためには、支社全体で取り組むことが大事だと考えています。
参加メンバーや導入している支社長は、「参加して良かった」「これからも続けたい」と言っています。とはいえ、ネガティブなメンバーに勧めるのは難しいと思うので、本社メンバーも活用してもらいながら、参加者を増やし、やって良かったと思える人が増えればいいなと思っています。
明歩谷:影響度についてアンケートをとったところ、特に個人のスキルについては非常にポジティブな結果となりました。一方、組織全体について見るとまだ改善が見込めるので、支社内でグループリフレクションが広がることで、組織の力が向上するのではないかと思っています。
白濱:G-POP®のPre(計画)、On(実行)、Post(振り返り)の質を高めていきたいと考えています。メンバーのコメントだけでなく、客観的な振り返りや気づきの機会が増えると良いのではないでしょうか。それを提供してくれる「G-POP®レポート」を使うことも視野に入れています。
また、個人への気づきだけではなく、組織全体への気づきを促してくれるツールとして、コードタクト社が提供している「G-POP®サマリ」にも期待しています。組織の傾向がフィードバックされることで、戦略に紐づけて、活動水準や目標につながるサイクルを回していけるのではないでしょうか。
明歩谷:他部署に異動した人から、使いたいという希望を聞くこともあります。今は営業メンバーのみ参加していますが、他部署からも希望があれば、広げていきたいと考えています。
ーチームタクトを使ったグループリフレクションを、どのような企業や人に勧めたいと思いますか?
白濱:テレワークなどでコミュニケーション機会が減っている組織は、グループリフレクションでメンバーの行動や考えていることを可視化できるので、孤立せず、頑張っている・悩んでいるのは自分だけではないとのマインドになるのではと思います。チームタクトとセットで活用することで、誰でもいつでも見やすく、より効果的です。
明歩谷:セールスグループの人材育成のプロジェクトに携わる中で、心理的安全性の構築や個人のスキルアップの打ち手の1つとして役立つと感じています。PDCAのスキルを向上させたい人には、合っているのではないでしょうか。
稲垣:異動が多く、メンバーの入れ替わりが多い部署におすすめです。私自身も本社に異動して、がらりと仕事が変わりました。チームタクトを見ると、部署メンバーの人柄や業務内容、スケジュール、働き方がわかります。これだけの情報が書かれているものはなかなかないのではないでしょうか。引継ぎにもなり、有効に使えると思います。
(注)
※1 G-POP®グループリフレクション
(日本たばこ産業様の社内では、チームタクトのグループリフレクションサービス「G-POP®ぐるり」を「G-POP®版グループコーチング」と呼んでいます。)
<特長>
・4人1組で毎週1時間、専用のG-POP®フォーマット(※2)に記載して順番に発表・感じたことをコメントし合うことで、それぞれのゴールに向けた、定期的で、質の高い振り返りによるセルフマネジメントの習慣化を支援します。
・メンバー同士のコメントから自分1人では得られない気づきを得られます。
ハイパフォーマーの仕事の進め方であるG-POP®をフォーマット化。記載することで、ハイパフォーマーの仕事の進め方が習得できます。
※2 G-POP®フォーマット