新人教育では新人に業務やスキルを定着させることはもちろん、メンタルケアやモチベーションの管理まで、多くのフォローが必要です。
しかし「教育効果が教育担当者によって左右されてしまう」「教育担当者の負担が大きくなってしまう」といった課題を抱える企業も少なくありません。そこで必要なのが、新人教育を仕組み化し、教育担当者の特別なアプローチを必要とせずとも新人が自走して育っていくような体制づくりです。
では一体、どのようにして体制を構築すればよいのでしょうか。そのポイントは「グループリフレクション」にあります。
本記事では、新人教育が失敗する理由や経験を成長へ変えるポイント、自律型人材が育つ体制づくりについて解説します。
目次
新人教育の目的
新人教育の大きな目的は、新人に対し業務遂行に必要なスキルを習得させることで、会社の戦力として活躍できる人材に育て上げることです。
「VUCA時代」と語られるように、日々変化し続けるビジネス環境に対応するためには「ただ指示された業務をこなす」だけでは不十分と言われています。答えのない課題に立ち向かうためにも、自発的に+αの工夫を行い、考えながら業務を遂行できる人材が必要です。
このような目的で行う新人教育ですが、様々な要因からうまく目的を達成できる教育ができていない場合があります。
新人教育のよくある課題
新人教育で起こりがちな課題には、次の3つがあります。
教育担当者のリソースが不足し、核心をついた指導ができない
自身の業務を抱える教育担当者はとくに、リソース不足に悩まされることがあります。
例えば、管轄する新人が8人おり、週に1人1時間の1on1を行うとした場合、合計時間は8時間となります。これは「丸1日分の業務時間」に相当し、1営業日分を丸々1on1に使っている計算です。
また、新人の理解度に合わせた個別の対応や、教育に関する準備など、多くの追加業務が発生します。すると担当者にフラストレーションが溜まってしまったり、深く核心をついた指導をする時間を持てないケースもあります。
自身の業務を優先した場合は教育の優先順位が下がってしまい、新人の不安に繋がることもあるでしょう。
教育担当者と新人の相性で成果が左右される
教育担当者と新人の相性で成果が左右されることも課題の1つです。
価値観や性格の相性によって、スキル習得や相談の気軽さには差があります。
特に新人が担当者に対して「この人は相談を受け止めてくれる」「自分を否定しない」といった安心感が感じられない場合は、日々の困りごとや不安を相談できないことも少なくありません。
このようななか、新人同士で「特定の人が指導者に気に入られている(嫌われている)」という認識が生まれるとさらに深刻です。不必要な摩擦や緊張関係を引き起こしてしまうため、お互いの不信感を助長してしまいます。
すると目指すべき協力関係の構築を妨げられてしまうだけでなく、上司にお伺いを立てるといった、保守的な組織風土になることもあります。
新人に主体性が身につかない
教育担当者によっては「指導者主導のアプローチ」となり、新人が受け身になって主体性が身につきにくい場合もあります。
この場合教育担当者が親身に細やかな指導を行っても、新人によっては言われたことをこなすだけでいつまでも成長しないケースもあります。すると新人はいつまでも教育担当者の指示を無くして動くことができないため、担当者はより一層リソースを取られてしまいます。
また、受け身となっている新人は
- 自らの課題を特定する
- どんな情報が必要か仮説を立てる
- 情報を探して取得する
といった能動的な学習ができないため、教育担当者のノウハウに依存しがちです。すると一人の価値観に染まり、限定された視点のなかで閉じこもってしまうため、ダイバーシティの観点でも劣後してしまうリスクがあります。
新人教育における課題を解決するポイント
新人教育失敗の例として3つ上げました。
- 担当者のリソース不足
- 担当者との相性問題
- 主体性を身に付けさせにくい
特に1つ目と2つ目は、1on1の課題点とも言い換えられます。
これらの課題を解決するポイントは、1on1のような1対1形式の指導方法から、メンバー同士で学び合う形式へ変えることです。
これにより、上司1人のみに負担が集中していた状況が改善されます(リソース問題)。また、1on1と違って上司以外にも複数人の意見が聞けるため、相性問題も解決できます。加えて、お互いに学び合う環境により相互の気づきからさらなる成長を促す科学反応が期待できるでしょう。
3つ目の解決について、主体性を持つということは、自ら考え、行動し、責任を持つということです。そのためにも、以下のポイントを意識すると良いでしょう。
1.心理的安全性を確保する
心理的安全性とは、「思ったことを素直に発言しても避難されず、受け入れてもらえる」といった安心感を持てる状態のことです。まずは新人がチャレンジしやすい環境を整えましょう。
2.権限を与える
新人に任せられる仕事は積極的に任せてみましょう。小さな成功体験を積み重ねることで、自信と責任感につながります。また、任せた仕事をやり終えた後は、振り返りをさせるようにしましょう。
人材育成の基本としてよく聞かれるものに「ロミンガーの法則(70:20:10の法則)」というものがあります。アメリカのロミンガー社が、人が成長するためには「何からどのくらいの割合で学びを得るのか」を調査したところ、
- 仕事上の経験:7割
- 先輩・上司からの助言やフィードバック:2割
- 研修や読書:1割
という結果がでました。
これをみるに、人が成長するには仕事上の経験の割合が最も高く、「どのように経験を成長に結びつけるか」が重要だとわかります。
経験を成長へ変える、コルブの「経験学習サイクル」
経験を成長へ変えていくために知っておきたいのが、コルブの「経験学習サイクル」です。コルブは経験に基づいた学習プロセスを、以下の4つに分けて提唱しています。
【経験学習サイクル】
- 具体的な経験
- 内省的な観察
- 抽象的な概念化
- 積極的な実験
新人の主体的な学びを促進するため、コルブの経験学習サイクルを以下のように活用すると良いでしょう。
1.具体的な経験・主体的な取り組みを行わせる
新人に、まずは「やってみる」機会を提供することが重要です。小さなタスクからでも良いので任せてみて、実際に経験させてみましょう。
2.自身の行動について、様々な視点から振り返る
経験の後には、必ず振り返りの時間を設けましょう。「何がうまくいったのか」「何がうまくいかなかったのか」「なぜそう感じたのか」などを深く考えるよう促します。
3.振り返りから得たものを、他の場面でも展開できるよう抽象化し、教訓の形にする
「この経験から、どのようなことが言えるのか」「他の状況にも応用できることは何か」などを考えさせることで、「教訓」を導き出させます。
4.作った教訓を実践してみる
次のタスクを与える際に、得た教訓を活かして行動するよう促します。次の行動が、また ①具体的な経験 として戻り、サイクルの循環に繋がります。
経験から学び内省し、抽象的な概念に昇華させ、次に活かす。このようなプロセスのサイクルを繰り返すことで、新人は単に経験を積むだけでなく、その経験から学び、成長することができます。
新人教育を成功させる「G -POP®グループリフレクション(G-POP®ぐるり)」
G -POP®グループリフレクション(G-POP®ぐるり)とは、先程紹介したコルブの経験学習サイクルを、チームで行い共有するという教育方法です。
チームで行うことで、多くの気づきが得られ、質の高い学びにつながります。次項で詳しく解説します。
G-POP®とは
G-POP®とは、中尾隆一郎氏が提唱する「ハイパフォーマーの仕事の進め方」を体系化したもので、
- Goal(ゴール・目的)を常に意識し
- Pre(事前準備)に時間を使い
- On(実行)しながら修正
- Post(振返り)から学ぶ
という4つのプロセスを繰り返すことで、パフォーマンス向上を図るフレームワークです。
1週間の業務をこのG-POP®シートに記入し振り返ることで、Goal-Pre-On-Postのサイクルを実践することができます。このサイクルを回させることで、社員は失敗や成功のポイントを自ら学び、その学びを次週に生かすといった好循環を作れ、「成功の再現性を高め、失敗の再発防止に努める」振り返りによるセルフマネジメント力の向上が期待できます。
G-POP®シートへの記入は、コルブの経験学習サイクルでいう「内省」「教訓」をたすけ、経験学習サイクルを活性化させます。
ぐるりとは
グループリフレクション(ぐるり)とは、ファシリテーターの進行に沿い、個人が経験したことや気付いたことを共有し、グループで対話を通じて内省(リフレクション)を深める手法です。
発表者が行った振り返りの内容に対し、他の参加者が感じたことを伝えることで他者の視点に触れ、新たな気づきや学びを得ます。テキストや口頭で言語化することでお互いの業務や考えに対する理解を深め、関係性を構築・強化します。チームタクトではぐるりを通じて、個人の内省力の向上と相互理解を深める場づくりを行う支援を行っています。
ぐるりでは全員に必ず5分ずつ発表する時間があるため、短い時間で的確に説明する能力が高まり、プレゼンスキルが向上します。また、他のメンバーの発表を聞く時間や、発表内容に対してコメントをする時間があるため、相手の話を聞くスキル、傾聴のスキルも向上します。
G-POP®ぐるりのメリット
具体的に、G-POP®ぐるりのメリットを見ていきましょう。
個人の成長
個人の成長に関するメリットには、以下のようなものがあります。
- セルフマネジメント力を強化できる
- 振り返りの習慣化により、継続的な改善を行えるようになる
- 目標達成力が向上する
- 時間管理スキルが向上する
G-POP®ぐるりの実施によって、ゴールから逆算し何をすべきかを考え、実行した結果から学び、改善するというサイクルを回すことができるので、自分で考えて動ける自律型人材へ育っていきます。
チームとしての全体の向上
G-POP®ぐるりは、協力関係が円滑に進むチームの創出にも繋がります。
- 情報共有の促進し、ナレッジマネジメントが向上する
- ゴール意識の徹底により、問題解決能力が向上する
- モチベーションや帰属意識が維持・向上する
- 心理的安全性が向上する
G-POP®ぐるりでは、定期的に「ゴールの意識付け」を行うため、日頃の動きも目的に沿って行えるようになります。また情報共有の機会にもなるため、ナレッジやその時の課題を迅速に共有できるのも特徴です。
また、大きく効果を発揮するのが「心理的安全性の向上」です。G-POP®ぐるりでは、発言する機会が平等に与えられるだけでなく、その人の強み・良さを引き出すことを大切にするため、発言が批判につながることがありません。すると心理的安全性が高まり、メンバーの積極性を底上げできるようになります。
G-POP®ぐるりをするなら「チームタクト」がおすすめ
G-POP®ぐるりはスライドや表計算ソフトでも行うことができます。その一方で、成果を定量的に把握できないため、管理が難しかったり、効果が薄れてしまったりすることがあります。
チームタクトは、G-POP®ぐるりをもっと行いやすく、より効果が出るように開発されたプラットフォームです。G-POP®ぐるりの効果を最大限に引き出すチームタクトの主な特徴・サービスをご紹介します。
①回答一覧表示
ぐるりの説明で触れたように、他者の視点に触れることは新たな気づきや学びに繋がります。チームタクトでは参加者全員のシートが一覧で表示され、他者のG-POP®シートも目に入るので、自然と他のシートを閲覧しやすく、他者から学ぶ行動を促すようなUI設計になっています。
②G-POP®レポート
チームタクト上の G-POP®シートの記述内容と交流の結果を分析したレポートです。G-POP®とは「ハイパフォーマーの仕事の進め方」を体系化したものなので、G-POP®シートがよく書けていると「ハイパフォーマーの仕事の進め方」に沿った進め方ができている、つまりパフォーマンスの高い状態が作れている、ということになります。また、より良い振り返りが書けるということは、言語化できているということなので、それはつまり自律自転につながってきます。どれだけハイパフォーマーの考え方を実践できているか、自律自転できているかといったことを確認する指標にもなります。
まとめ
本記事では新人教育のコツと、教育体制の構築について解説しました。
- 教育担当者のリソース問題・相性問題の解決策の1つは「メンバー同士が学び合う」形式に変えること
- 主体性を身に着けさせるためには、権限を与え、経験を成長に変える経験学習モデルを取り入れると良い
- 学び合いと経験学習の効果を最大化するのに「G-POP®ぐるり」が有効
新人教育にぜひ、G-POP®ぐるりを検討してみてはいかがでしょうか。詳細は下記よりお気軽にお問い合わせください。