企業内の人材によって社員教育の一環として行われる社内研修は、特定の業務に必要な知識やスキルを高める役割を果たします。
自社のMVV(「Mission:ミッション」「Vision:ビジョン」「Value:バリュー」)の共有を含めた社内研修を通して、組織力強化を促し、個人と組織双方の目標達成力を向上させることが可能です。
この記事では、社内研修の「目的の明確化」「プログラム設計」「実施と効果測定」について解説します。社内研修を企画中の企業や、実施する人事担当(人材開発担当)の方は参考にしてください。
社内研修の目的とは
研修で十分な結果を得るためには、研修の目的を明確にし、組織内で認識のずれが生じないよう「目的の定期的な確認」を習慣化していくことが重要です。
ここでは、社内研修で主軸となる3つの目的について解説します。
組織全体の目標との整合性を確認する
社内研修の主な目的は、社員一人ひとりのスキル向上や知識の習得です。これを達成するために、明確な目標を立てた上で実施することで、業務の生産性向上や離職率低下、上司の人材育成に対する意識の向上といったさまざまな効果を得られます。
目標の明確化のみにとどまらず、組織全体の目標と研修内容に整合性があるか確認しながら進めていくことが、有効な研修につながります。
目標は単なる手段ではなく、目的を見据えた上で実行する具体的なミッションと考えましょう。
研修対象者の現状分析と課題を把握する
社内研修の目標を設定する際は、企業方針から理想の社員像や組織像をあぶり出し、現状とのギャップから課題を抽出した上で、解決のために必要な能力を導き出します。
研修担当者は現状分析のため、対象者とその上司にヒアリングし、ニーズや組織の状況、現在の個々のスキルを確認しましょう。
浮き彫りになった課題は、組織に与える影響が高い順に並べ、研修目標に落とし込みます。目標が明確になることで、研修内容も定まってくるでしょう。
具体的な目標設定と達成指標を決める
研修目標や達成指標を決める際には「SMARTの法則」を取り入れ、必要な内容を網羅しましょう。
- Specific:目標は具体的に設定し方向性を定める
- Measurable:目標はできるだけ数値化し達成指標を明らかにする
- Achievable:対象者の手の届く目標を設定する
- Related:目標と目標は関連づけて設定する
- Time‐bound:目標達成を確実にするため期限を設定する
上記の法則に従うことで、具体的な指標を提示しやすくなります。
効果的な社内研修プログラムの設計
社内研修を実施する際は、研修対象者や研修目的を明確化し、テーマに合った効果的な研修の方法や形式を選びつつ、カリキュラムと研修プログラムを作成する必要があります。
ここでは、社内研修の種類と代表的な3つの研修形式、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
社内研修の種類
社内研修は対象者や実施内容によって、大きく3種類に分けられます。
- 階層別研修:対象者を「部長」「若手社員」「新入社員」などの階層に分け必要な知識やスキルを養う
- 職種別研修:営業や経理、エンジニアなどの職種ごとに求められる知識やスキルを身に付ける
- テーマ別研修 :コンプライアンスやマーケティングなどテーマに焦点を当てて実施する
対象者と研修目的を意識して、適切な研修方法を選びましょう。
研修内容の選定とカリキュラム設計
研修内容は、研修目的や方向性などを基に具体的に考えます。対象者が新人なのか管理職なのかによって、研修内容は異なるため、ヒアリングしながら総合的に決めましょう。
研修内容が決まったらカリキュラムを設計します。カリキュラムは、それぞれの学習項目の習得にかける時間を決め、計画に落とし込んだものです。効果的かつ効率的な研修を実施するには、項目ごとの最適な時間配分が重要です。
研修手段とそれぞれのメリット・デメリット
研修に代表されるOff-JTには集合研修、eラーニング、セミナーといったものがあります。
また、集合研修は手法によってオンライン研修、対面研修に分けられます。
一般的に、研修はインタラクティブで参加者同士の交流があるがあるものが多く、セミナーは講師から受講者へ一方通行的に発信されるものが多いです。
以下にその特徴をまとめてみましょう。
研修時間と場所の確保
研修方式やカリキュラムが決まったら、研修時間と場所を決定しましょう。
研修時間は、対象者の集中力が続くよう設定します。1回の講義時間の目安は60分程度で、長くなる場合は、60分に1度の休憩を挟みます。
場所は、研修の種類や規模によって決めましょう。役員や幹部が集まる研修はホテル、新入社員や管理職が対象ならセミナーハウス、1日で終了する研修には貸し会議室がおすすめです。
必要な教材や設備の準備
研修資料を用意する際は、簡潔で理解しやすく、なおかつ強く関心を惹きつける内容で作成しましょう。
受講者を飽きさせない工夫が必要ですが、小さな文字や過度なアニメーションは、集中力が切れる原因となります。スクリーンに投影した際の見え方や資料の見やすさは、講師以外の人が客観的視点で確認することで、改善点を見つけやすくなります。
研修で使用するプロジェクターやホワイトボード、マイクなどの機器は前もって用意し、当日滞りなく研修を進められるよう準備しましょう。
研修実施と効果測定
プログラムや教材、場所の用意ができたら、いよいよ実施に向かいます。
社内研修の実施時は企画担当者が立ち会い、改善点があれば講師に修正を求め、対象者のモチベーション維持に努めましょう。
研修後は、あらかじめ準備していた方法で効果測定を行います。改善を繰り返すことで内容がブラッシュアップされ、研修効果が高まります。
研修実施前の事前準備
研修実施前に、研修目的や意図、タイムテーブルを講師と共有し、PPT作成やリハーサルをサポートしましょう。
対象者には、研修目的や簡単な内容を伝え、意欲的な参加を促します。対象者の上司には研修効果を説明し、快く送り出してもらえるよう理解を得ましょう。
社内研修の成功には、研修内容の充実や円滑な進行に加えて、関係者の理解が欠かせません。事前の働きかけを入念に行い、研修当日を迎えましょう。
研修中の進捗管理とフィードバック
社内研修は計画通りに進まない場合があります。企画意図と異なる方向へ進んでいると見受けられる場合は、その都度講師へフィードバックしましょう。例えば、以下のような場合が該当します。
- 講師の話し方や時間配分が適切ではない
- 対象者の理解レベルと講演内容が一致していない
- 事前に周知していた研修内容と異なる
フィードバックは研修の質の向上につながるだけでなく、対象者のモチベーションアップやスキルアップにもつながります。
研修後の効果測定と振り返り
実施後の効果測定や振り返りによって、研修は改善・ブラッシュアップされていきます。
ただし、振り返りは、単なる感想収集で終わらせないことが大切です。研修での学びが実務に反映されるようアフターフォローを行いましょう。
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学習ログの分析で育成効果を可視化できるので、実施者の目から見ても成長実感を得られやすいでしょう。
育成効果を可視化し、セルフマネジメント力の向上を実現した事例
社内研修に関するよくある質問
こちらでは、社内研修の実施に関するよくある質問をまとめました。費用対効果の測定方法や社員のモチベーションを高める方法、成功や失敗の事例を取り上げましたので、企画する場合の参考にしてください。
社内研修の費用対効果をどのように測定すればいいですか?
研修の効果は1対1で出るものではないため、直接的に測ることは困難です。
研修の企画段階では、最終的な目標とその効果測定として以下のようなものを立てることが良いと思いますが、目標の達成度、変化率には研修以外の要素が含まれることが多いです。
そのため、別の測定方法としては、最終目標に至るまでのプロセスを分解し、その分解した指標で測る方法を採用するパターンもあります。
例えば「売上増加率」を最終目標として営業研修を行った場合、売上が上がる前のアクションとして、提案件数の増加などが見込まれるでしょう。結果の前のアクションがなされたかどうか、あるいはそのアクションの成功率などがどう変化したかを記録すると、より研修の効果を測りやすくなります。
社員の研修へのモチベーションを高めるにはどうすればいいですか?
対象者のモチベーションを高めるには、興味を引くカリキュラムの作成や、インセンティブの設定、対象者が情報交換できる機会の設定が効果的です。
例えば、学んだ内容の振り返りを対象者同士で共有すると、お互いの観点の違いが見えたり、自分一人では得られなかった気付きからより学びを深めたりすることができます。互いに刺激しあいモチベーションにつなげることができるでしょう。
また、講師やほかの対象者からのフィードバックも良い刺激となり、モチベーションの向上を促進することができます。
社内研修の成功事例や失敗事例を教えてください
社内研修の成功例には、「社員全員が共通の研修を経験することでコミュニケーションが活性化され組織力が向上した」「実践重視の研修や最新情報に関する研修は即戦力の強化につながった」などがあります。
一方失敗例としては、「目的が不明確で達成度合いを測れなかった」、「対象者の知識レベルに差があり意図した成果を得られなかった」「目標の設定や効果測定を行わなかったため研修のブラッシュアップができなかった」などが挙げられます。
まとめ|効果的な社内研修で組織全体の成長を促進しよう
この記事では、社内研修の企画・運営において押さえるべきポイントを、目的設定、プログラム設計、実施と効果測定の3つのステップに分けて解説しました。
社内研修は、社員のスキルアップや組織全体の成長を促進するための重要な取り組みです。この記事で紹介したポイントを参考に、効果的な社内研修を企画・運営し、社員の成長と組織全体の活性化につなげていきましょう。
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